Month: June 2016

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あまりに値段の安い飲食店は不安になる。お客さんが少ないと余計に。 さっき入った中華屋で食べた定食は、メイン料理一品、ライス、スープ、サラダふたつ、ザーサイ、食べ終わる頃に届く半ラーメン、以上で750円。税込。安い。というか多い。しかもランチじゃなくて夜。 こんなにお得なのにお客さんが少ないのは、ははん、雨だからだな。と推測したのだけど、食べ始めてすぐに別の可能性に気づいた。あまりおいしくない……? なんだか全体的に味が薄い。ぼんやりしている。中華料理って大げさで濃い味付けの祝祭感がたまらないのに、私服で踊るサンバのようなもの足りなさがある。羽根飾りがない。 スープはとろみと卵以外の雑味を感じず、つまり塩が足りていない雰囲気。まったくの無味ではないが、どちらかといえばとろみのあるお湯に近い。 一品料理は炒め物で、エビとカシューナッツが入っていた。味はあまり覚えていない。一所懸命食べたな、という印象は残っている。まずくて食べられないということはまったくないけれど、食べなきゃ先に進めない焦燥感に駆られていたように思う。もっと味わわないともったいない、でも味わうべき味があんまりない。そんな葛藤。 サラダがふたつある理由もわからない。でもそれはうれしい。ひとつはキャベツメインの普通のサラダで、もうひとつは量が少なくてチキンナゲットが一個だけ乗っていた。まとめてくれてもいいと思った。 半ラーメンは担々麺を選んだ。もっと辛味や刺激がほしい味だった。ライスとザーサイはごく一般的なもので、感動はないが安心はあった。そんな中、これはうまいと興奮したものがひとつだけあった。それは水だった。 文京区の水がうまいのかこの店の浄水器がよいのかわからないものの、とにかく水はごくごく飲めた。ミネラルウォーターか純水か、とにかく雑味も臭みもなく何杯でもいけそうだった。食後はその水を心ゆくまで堪能し、750円支払って満足して店を出た。 いい水だった。料理はアレだけど、こんなに水がおいしいんだし、そもそも今日は自分の味覚がおかしかったのかもしれないし、あるいはこの町の住民に中華料理好きがたまたま少ないだけかもしれないし、なんにしてもこの店がもっと流行ってくれればいいなと親近感を抱きながら帰途についた。 なお、すぐ近くの餃子の王将を通りかかったら満席だった。

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熱いお茶を内腿にこぼされ、朝からテンションが低い。 幸いやけどにはならず、お茶をこぼされたこと自体はよくあるトラブルとして腹も立たないのだけれど、問題はその後に「ここ最近でいちばん大きな声が出た!」と笑われたことがイヤで仕方ない。なんで熱いお茶をかけられた上にバカにされなければならないのか…。 だからテンションが低いのだ、ということを本人に説明したら、「ちがうちがう、笑っちゃいけないと思ったら余計に笑えて…」と釈明を受けた。「大丈夫?」と聞かれたから所感を答えただけで責めたかったわけじゃないのだが、こう自己弁護を並べ立てられると余計にテンションが下がる。大丈夫じゃなくなってくる。 関係あるかないかでいえばない方に近いんだけど、ファンキー加藤という人の不倫話が世を賑わせていた。これは巷間ではオモシロ話として消費されるのだろう。誰がいちばんゲスいのかで盛り上がるのだろう。 自分としては、夫に裏切られた上によそ様の養育費として生活費が吸い取られるファンキーの妻子が理不尽すぎてつらい、と最初に思った。 彼らは一方的に奪われた。被害しかない。非のない被害者がいる以上不倫はよくない所業だと思うのだけど、「不倫はそんなに悪いことなのか?」と鼻息を荒くする勢力もあって、テンションが低い。 実はファンキーの妻子はそれほどつらい状況にない、という結末であればそれがいちばんいい。