Month: August 2016

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ヘルパンギーナに続いてRSウイルスとやらにも罹患した我が子は、この夏けっこう保育園を休んだ。それに合わせて親たちも会社を休まざるをえなかった。強制夏休み。 我が子はプールデビューも果たし(大泣きしたそうだ)、1日単位で急成長を続けている。バイバイと手を振る、ありがとうと頭をさげる、というようなこちら側の解釈次第でどうにでもなる案件もあるけれど、誰がどう見てもそうとしか言いようのない明らかな成長案件もある。 我が子が立った。 仁王立ちだ。 その日は自分が休みで面倒を見ていたのだが、ベッドでゴロゴロしていたらいきなり立った。つかまり立ちではなく、両手をだらりと垂らして二本の脚だけで立っていた。 おおお!とつい叫んでしまった。我が子は真剣な表情で、どこか遠くを見据えて「んんん」と唸っている。まるで武蔵坊弁慶の最期のような、立派な立ち姿だった。驚きのあまり写真を撮り損ねた。 ちなみに、真剣な表情で遠くを見据えて「んんん」と唸るには理由があり、それをこの父は知っているぞ。 ウンチをしていたのだ。 初の仁王立ちはウンチをしながらだった! あとでオムツを替えたらそんなに出てなかった。立ってまで気張ったのに残念だったね。 翌日配偶者も我が子の仁王立ちを見ることができた。日々成長だ、と言い合って家族みんなでカレーを食べに出かけた。夏が過ぎていく。

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ちょっと前、海の日あたり、我が子がヘルパンギーナに罹患した。初めて聞く病名だった。 最初に高熱が出たので、会社を休んで病院(いつも空いている)で診てもらうと、のどの腫れから来た熱ですねー、てんで抗生物質を処方してもらって自宅療養。しかし熱が下がらない。 ミルクも離乳食も一口だけごっくんしたら大泣きしてイヤイヤするし、口の中に指を入れてしきりに何かを気にしているので、おっ広げてよく見ると舌先にプツプツと口内炎がある。こんなに口内炎があるのはおかしいってんで、翌日に配偶者に別の病院に連れていってもらったところヘルパンギーナであるとの診断がくだった。 プール熱、手足口病と並ぶ三大夏風邪のひとつ、ヘルパンギーナ。高熱が出て口内炎がたくさんできるらしい。まんまの症状だ。配偶者によると、のどの奥にもたくさんの口内炎があったらしい。その口内炎が潰れてしみるんだそうだ。考えただけでつらい。 熱が下がるのを待つしか対処のしようがなく、自分が1日、配偶者が3日休んで看病した。我が子はつらくてほとんどの時間泣いていた。可哀想で可哀想でこっちもつらかった。我が子には笑顔でいてほしいと心から思った。 0歳の記憶なんてほとんど残らないから、本人がつらいのは今この瞬間だけかもしれない。でも親の記憶には積み上がっていく。親が代わりにつらい記憶を引き受け、我が子に再びそんなつらい思いをさせたくないと手を尽くす。そうして笑顔を増やしていく。 仕事で疲れた帰りの電車で、よくスマホで我が子が笑っている動画を観る。本人は笑った記憶はないかもしれないけど、親の記憶には積み上がっていく。何度も何度もその笑顔に助けられていく。