CHOP-ME-NOT

◆2012/11/18 小説集『突き抜け5』できました！◆
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交渉という冒険に挑んだ。

先週末にセールでかっこいい靴を買ったんです。

かっこいい上に50%オフですから、価値としては400%くらいですよね？
（※かっこいいを価値2倍、半額を価値2倍として計算）

↑これの違う色のやつです

いい買い物したなーと思って、なにせ400%ですからね、その靴にがっちり足を突っ込んでがっちり紐を縛って、意気揚々と家を出たんです。自分が100%、靴が400%だとすると、計算上8割が靴でしょうか、どちらかというと靴が本体くらいの勢いで闊歩しました。無人の荒野を行くがごとく。私にとってのオアシスたる近所のデニーズまで。

そうしたらわかったんです。

この靴、すごい足が痛くなるんです。

デニーズでは完全に靴を脱いでました。ドリンクバーに行く時だけ装着。激痛に耐えながらコーヒーを注ぐ、言い換えれば痛みと引き換えにコーヒーを得る悪魔の契約です。その戦いに終わりが見えず7時間も滞在してしまいましたが、結局痛みはデニーズから出た後にも持ちこされることとなりました。

この時点で、一日履き続けることは無理だと悟りました。
靴の構造のことはよくわからないんで今ググったのですが、内側のアッパー部とベロが縫い合わさっているところ、そこの端っこがめくれて立ちあがってしまっており、足の甲に食い込むような状況だったのです。しかも両足。

素人目にも普通じゃない状態でしたので、これはもしやあれかな、あれなケースなのかなと思いまして、生まれて初めて店に交渉しに行こうと決意しました。

—–

私は元来、交渉事とかすごく苦手なのです。

いつもなら「まあセール品だし、セール品は返品不可って大きく張り紙してあったし、店頭に展示されていろんな人に試着された現品限りの最後のひとつとわかって買ったのは自分だし、もろもろ差し引いたら痛い靴を履き続けるとしてもプラマイゼロじゃないかな。最悪、オブジェとして部屋に飾るのもありっちゃありだし」と自分に言い聞かせて納得させてしまう傾向がなくもないですが、今年はそういうなあなあな自分から脱却するのも重要なのではないかと思い至りました。どう見ても詐欺に遭いやすい人の思考パターンですからね。これからはフットインザドアとか、ドアインザフェイスとか、もうめっちゃ警戒しますよ。

というわけで雪の降る(ほぼ吹雪ぐらいの勢いの)会社帰り、購入した店を訪れました。

はじめての経験ですから、店員になんと言って切りだそうかと入念にシミュレーションし、最初の一言は「こちらで買った靴なんですけど、ちょっと聞きたいことがありまして」というシンプルなフレーズをチョイスしました（こういうことで悩む人って世の中にどれくらいいるのでしょうか）。店内にお客さんがいっぱいいて店員に話しかけづらい雰囲気だったらやだなとか、最初の一言で「え？」と訊き返されたら多分心折れるなとか、それはそれは不安たっぷりで店に忍びこみました。

すると目ざとく私を見つけた手持無沙汰そうな店員さんが、存外明るくいらっしゃいませーと迎えてくれたので、これなら大丈夫！と意気込んで上記のフレーズを暗誦しましたら、丁寧に奥へ案内してくれました。

ああよかった。
もうここで目的の大部分は達成できたので、「履いたら痛いからなんなんですか？」とか冷たく言われたとしても戦勝気分で帰れるなとすら思いました。いやだめだ、気持ちを強く持て、妥協せずに可能な限りの成果を求めよ！　そう自分に言い聞かせて成り行きを見守っていましたら、店員さんは他の店舗の在庫を調べたり、修理が可能かどうか問い合わせたり、親切に対応してくださいました。店員さんが電話している間は自分が手持無沙汰になってしまったので、ボーーっと突っ立っていました。セールでしか買わない人間のためにすみません、すみません、と思いながら。

結果、靴を預かって修理できるか詳細に調べ、無理であれば在庫分と交換、というところに着地しました。

もちろん私に異論はありません。

何事も言ってみるものだな、と齢30を過ぎてひとつ勉強になりました。
不良品の交換という視点に立てば当然の権利ではありますので、いいようにされる哀れな消費者はこれで卒業です！

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その帰途、ラーメン屋に入ったらトッピング無料券の期限が切れていて使えないという事案が発生しました。また、歩道にできた水たまりにくるぶしまで足を突っ込むという事案が2件発生しました。

・・・運勢的に、靴の件は正式連絡があるまで油断できないかもしれません。

ちなみに今年のおみくじは大吉です。しかし枝に結んで置いてきてしまいました。

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